補綴構造設計士・歯科技工士川島 哲の世界
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虫歯退治3種の抗菌薬

阿部和正(埼玉県開業)

宮城県の主婦(30)は、虫歯が痛み、とくに冷水を飲むとしみるように強く痛んだ。 ところが、近くの歯科医院でエックス線検査を受けても虫歯は見つからない。 それでも痛みは治まらないため、仙台市泉区のタクシゲ歯科医院で抗菌薬を塗る治療を受けた。 『3Mix(ミックス)-MP法』と呼ばれ、ほとんど歯を削らずに済んだ。 1週間後には痛みが消え、冷水にしみる痛みも軽減。3回の通院で治療は終了した。

削らず詰めず塗って待つ

虫歯の抗菌薬治療

虫歯は、口の中にいるミュータンス菌など様々な細菌が、食べかすなどから酸を作り、酸が歯を溶かすことで起こる。 虫歯部分にはびこる細菌を退治すれば、歯を削らずに虫歯の進行を抑え、歯の持つ自己修復能力により、元の歯に戻すことができる。
 これが「3Mix-MP法」による治療の考え方だ。細菌を殺す3種類の抗菌薬と、薬剤を浸透させる軟膏などの頭文字をとってこう呼ばれる。
 この治療を確立した一人、タクシゲ歯科医院長の宅重豊彦さんは「悪さをする細菌を除き、生体の回復力に任せるのは内科では当たり前の治療法。 それが歯科領域にはなかった」と話す。

 歯は表面の硬い「エナメル質」、その下の「象牙質」、血管や神経が走る「歯髄」の3層構造。虫歯がエナメル質にとどまっているうちは、 痛みはないが象牙質まで進行すると痛みが出ることがある。象牙質は「象牙細管」という細いチューブが集まってできていて、歯髄の神経につながっているからだ。 象牙質に達した虫歯の治療では、虫歯で色が変わった部分を削り、そこを消毒液で殺菌して金属などをかぶせるのが一般的だ。 しかし、細菌に潜む菌まで完全に殺すことは難しく、しばらくたつと虫歯が広がり、再び歯を削るケースが多かった。

「3Mix-MP法」は、この弱点を克服する手法。虫歯部分に抗菌薬を塗り、樹脂などでふたをすると、薬で細菌が死滅する。 虫歯で破壊された部分にカルシウムが沈着し、約1年後には象牙質部分が元のような状態に回復する。
 一度処置すれば抗菌効果は長時間続く。宅重さんによると、歯髄まで達し、通常なら歯髄を抜く治療が必要な重度の虫歯でも、 1カ月後には9割以上はほとんど削らずに痛みが消えたという。虫歯は削って治す、という従来の常識を一新する手法だ。
 この治療で使う抗菌薬は、メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフロキサシンの3種類。新潟大大学院医歯学総合研究科教授の星野悦郎さんが、 この3剤に軟膏のマクロゴール(M)とプロピレングリコール(P)を加えることで、歯の中への抗菌薬浸透性が高くなることを突き止めた。いずれの薬も内科などで使われており、使う量は微量なので安全性には問題ないという。保険適用されないが、薬剤費は歯1本あたり4〜5円で、 患者の負担は従来の虫歯の治療と変わらない。

「削って詰める」が基本だった歯科治療に転換を迫る治療法だけに、学界から当初は反発があった。宅重さんは、これまで約2500人の歯科医師に、 この新治療の実習を行い、普及に努めている。

(科学部・木村達矢)

3Mix-MP方を行っている歯科医院

●牧歯科医院(青森市)017-775-8881 ●トヨシマ歯科(大阪府島本町)075-961-0418
●タクシゲ歯科医院(仙台市)022-373-5695 ●くき歯科(大阪市)06-6561-6480
●大河原歯科医院(山形県天童市)023-653-2206 ●岸保歯科クリニック(広島県府中町)082-286-1200
●煙山歯科(東京都目黒区)03-3716-0851 ●かいで歯科医院(広島県廿日市市)0829-32-1777
●寺西歯科医院(愛知県大治町)052-443-0961 ●戸高歯科医院(大分県佐伯市)0972-45-0841

2005年7月11日(月)  読売新聞・夕刊

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