歯は表面の硬い「エナメル質」、その下の「象牙質」、血管や神経が走る「歯髄」の3層構造。虫歯がエナメル質にとどまっているうちは、 痛みはないが象牙質まで進行すると痛みが出ることがある。象牙質は「象牙細管」という細いチューブが集まってできていて、歯髄の神経につながっているからだ。 象牙質に達した虫歯の治療では、虫歯で色が変わった部分を削り、そこを消毒液で殺菌して金属などをかぶせるのが一般的だ。 しかし、細菌に潜む菌まで完全に殺すことは難しく、しばらくたつと虫歯が広がり、再び歯を削るケースが多かった。
「3Mix-MP法」は、この弱点を克服する手法。虫歯部分に抗菌薬を塗り、樹脂などでふたをすると、薬で細菌が死滅する。
虫歯で破壊された部分にカルシウムが沈着し、約1年後には象牙質部分が元のような状態に回復する。
一度処置すれば抗菌効果は長時間続く。宅重さんによると、歯髄まで達し、通常なら歯髄を抜く治療が必要な重度の虫歯でも、
1カ月後には9割以上はほとんど削らずに痛みが消えたという。虫歯は削って治す、という従来の常識を一新する手法だ。
この治療で使う抗菌薬は、メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフロキサシンの3種類。新潟大大学院医歯学総合研究科教授の星野悦郎さんが、
この3剤に軟膏のマクロゴール(M)とプロピレングリコール(P)を加えることで、歯の中への抗菌薬浸透性が高くなることを突き止めた。いずれの薬も内科などで使われており、使う量は微量なので安全性には問題ないという。保険適用されないが、薬剤費は歯1本あたり4〜5円で、
患者の負担は従来の虫歯の治療と変わらない。
「削って詰める」が基本だった歯科治療に転換を迫る治療法だけに、学界から当初は反発があった。宅重さんは、これまで約2500人の歯科医師に、 この新治療の実習を行い、普及に努めている。
(科学部・木村達矢)


